首都圏建設アスベスト訴訟東京地裁で勝訴判決

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首都圏建設アスベスト訴訟判決勝訴

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建設現場でのアスベスト(石綿)被害について、国に賠償を命じる初の判断が12月5日、東京地裁で言い渡されました。国が必要な規制を怠ったのは違法と断罪し、政治による救済を求める意見も付記しました。原告らが求めている、建材製造企業やゼネコンの相応の負担による「被害者補償基金」の創設へ、「大きな一歩」となりうるものです。

判決は、1972年には中皮腫などの深刻な病気を引き起こすとの医学的知見が確立していたとし、遅くとも81年1月の時点で、防じんマスクの着用義務付けや警告表示などの規制をおこなっていれば、「被害は相当程度防げた」と指摘し、国に賠償を命じました。

しかし、国の怠慢を指摘する一方で、ゼネコンなどの支配下で労働者と一緒に働く一人親方や零細事業主は労働安全衛生法上の「労働者」ではないとし、対象から外したので、150人が救済されませんでした。

アスベスト含有建材の製造を禁止すべきだったとの原告の主張も退けました。80年以降、欧米各国が使用量を急減させるなか、「石綿の代替化の努力義務」(75年・労働省規則)にもかかわらず、ニチアスやクボタなどが2000年代まで製造し続け、被害を拡大した事実に目を閉ざす判断と言わざるを得ません。安全衛生法上の国の責任は「二次的」とされ、賠償額が3分の1に減額されています。「一次的」な責任を負うべきなのは被告・建材企業42社です。ところが判決は、遅くとも81年以降、危険性を明示する注意義務があったとしながらも、その賠償責任をすべて免罪したのです。現場を渡り歩く建設労働者にとって、病気の原因となる建材が、いつ、どこの会社の製品だったかを特定するのはほぼ不可能です。

裁判で、原告側は多数の加害者がいる場合、被害の因果関係を推定して加害者たちの責任を問う「共同不法行為」を指摘していました。石油コンビナート施設を操業する6社に賠償を命じた、四日市ぜんそくをめぐる公害裁判で活用された民法上の規定です(72年、津地裁四日市支部)。

しかし、判決は被害者一人一人についての加害者の特定を求めたうえで、被告42社の中に加害の可能性の少ない企業が含まれているなどとして、原告の主張する「共同不法行為」を認めませんでした。

これでは有害製品でもうけた加害企業が免罪されてしまいます。そのせいか、判決は原告側に「共感するところが少なくない」とし、建材企業やゼネコンの責任による救済制度の創設について、「立法府と関係当局における真剣な検討」を求める異例の「意見」を付け加えています。

原告の願いは「生きているうちの解決」。救済制度の早期確立へ、国を動かす運動が求められます。

九州建設アスベスト訴訟を支える会

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