「九州建設アスベスト訴訟」裁判がいよいよスタート

建設アスベスト被害者・家族らで組織する「福岡建設じん肺アスベスト被害者と家族の会」会員や建交労大分・長崎・熊本の組合員を中心に2011年10月5日提訴した「九州建設アスベスト訴訟」裁判がいよいよスタートしました。

第1回口頭弁論行われる

アスベストの危険性を知りながら規制を怠り、使用を促進し続けた国と、労働者の命と健康を犠牲にして業界の利益を優先に被害を拡大させた、アスベスト建材メーカー42社を相手に起こした裁判の第1回口頭弁論が、2012年1月18日福岡地方裁判所(田中哲郎裁判長)で行われました。
建設アスベストの裁判は、東京・横浜両地裁で闘われている「首都圏アスベスト訴訟」をはじめ、北海道・京都・大阪でも建設で働く仲間が裁判闘争に立ちあがっています。
この日も全国から同じ思いで闘う仲間と県内の共闘団体から100人以上が駆けつけ傍聴席を埋め尽くしました。

圧巻の原告の意見陳述

第1回裁判は、原告・弁護団、国とメーカーの代表者・弁護士、そして訴訟を支える仲間の傍聴者が見守るなか、原告側より原告本人の平元薫さん(67歳大工)、原告遺族の石原律子さん(石原誠治さん享年70歳塗装工の妻)、小川弁護士(首都圏建設アスベスト弁護団)、山本弁護士(九州建設アスベスト訴訟弁護団団長)の4人が、法廷で意見陳述を行いました。国と企業は、全面対決の姿勢を示しています。
原告団長の平元薫さんは、「50年近く大工として数百件の現場で精一杯働いてきた、その結果アスベストが原因の肺がんとなり療養を強いられ、普通の生活ができないばかりか死と隣り合わせの恐怖の毎日である。
国と企業はなぜアスベストが危険だとわかっていながら、私たち労働者に使わせ続けてきたのでしょうか」と問いただしました。
また、昨年7月に肺がんで亡くなられた石原誠治さんの妻・律子さんも法廷に立ち、仕事に誇りを持ち、仕事一筋で働いてきた夫が、アスベスト被害による壮絶な闘病生活を振り返り「これ以上、夫のような被害者を出したくありません。
国や企業はきちんと責任をとるべきです」と涙ながらに訴えました。

”あやまれ!つぐなえ!なくせアスベスト被害!”

この裁判を通じて、今後さらに拡大されるといわれるアスベスト被害に対しての救済制度、また被害の根絶へのしくみを国の責任でつくらせていこうと考えています。
裁判後の報告集会(九州建設アスベスト訴訟を支援する会発足集会)では、「働く者の命と健康を守る社会にむけて、必ずこの訴訟に勝利しよう」「全国のアスベスト訴訟を勝利しよう」と決意を固めました。
多くの仲間の「支える会」への参加をお願いします。

福建労北九州支部新屋敷浩二



2012年1月18日 九州アスベスト訴訟第一回公判門前集会・支援総会



「いの健」全国センターが第14回総会

働くもののいのちと健康を守る全国センターは12月9日、平和と労働センターで第14回総会を開き、代議員・オブザーバーなど104人が参加、提案された活動方針などすべての議案を満場の拍手で決定・確認しました。(写真)

あいさつした福地保馬理事長は、「すべての都道府県に『いの健』センターを確立しようをスローガンにかかげてきた。25都道府県で確立され、早急に30の都道府県で地方センター確立にはげみたい」と述べ、「ディーセントワーク獲得にむけ何が課題になっているか熱い討論を」と呼びかけました。

全都道府県の過半数を超える地方センター

岩永千秋事務局長が活動方針案を提案。ディーセントワーク獲得と政策・制度要求の実現、職場・地域でいのち、健康を守る活動、被災者救済と補償など6つの柱で活動の到達点を報告。大震災被災地での健康障害予防で行政の前向きな変化をつくりだしたことや、結集する地方センターが全都道府県の過半数を超えたことなどを確信に、異常な長時間労働の是正、夜間労働を規制して人間らしい労働と生活を保障する職場と社会の実現を呼びかけ、全労連のディーセントワーク署名の展開を提案しました。

討論で、全教の代表は、教職員の超過勤務は月平均60時間以上の長時間労働だと発言。宮城センターの代表は、県内教職員の3割がうつ・抑うつ状態にあるとの調査結果を紹介しました。京都センターの代表は、原発労働者の非人間的な労働実態に言及し、この問題を「いの健」センターの重点の一つにすべきだと発言。全国過労死を考える家族の会の代表は、「過労死防止基本法」制定にむけ、100万人署名への支援を要請しました。山梨センターの代表は、過労死の認定基準を改善する必要性を強調しました。自治労連浜松市職組の代表は、消防職員のアベスト公務災害認定を実現したと報告。北海道、神奈川、大阪の代表がアスベスト根絶について語り、裁判勝利への決意を表明。建交労の代表はトンネルじん肺基金の創設について述べました。

2団体に「いの健」賞

第8回働くもののいのちと健康を守る全国センター賞が小池友子さんとマツヤデンキ小池さんの労災認定裁判を支援する会、上段さんの過労自殺裁判を勝たせる会に贈られ、「支援する会」事務局長・鈴木明男さんと「勝たせる会」会長・生熊茂実さんが受賞の言葉を述べました。

総会では、日本学術会議提言「労働・雇用と安全衛生にかかわるシステムの再構築を」について、岸玲子北海道大学環境健康科学研究教育センター・センター長が1時間余にわたって記念講演を行い、受講者の質問に答えました。



人間を第一に考える社会への転換をすすめよう

年頭あいさつ

働くもののいのちと健康を守る全国センター
理事長 福地 保福地 保

東日本大震災と福島第一原発事故災害からの復興の先が見えないまま、新しい年を迎えました。震災は、日本の社会に存在する矛盾を一度に露呈し、いまだに私たちの心を揺さぶり続けています。新自由主義による規制緩和政策と、原発依存のエネルギー政策は、企業の営利を優先する「24時間社会」を創り出し、過酷な労働現場と、地域の荒廃を生み出しました。その状況を背景にしての今回の震災でした。

被災地では、復興に向けて努力が続けられていますが、地域の復旧の目処が立たず、未だに生活と生業(就労)の再建が進んでいません。福島第一原発では、過酷な被曝作業が続き、労働者の死亡も出ています。被災地ばかりでなく、日本国中に、放射能汚染に対する不安が高まっています。また、この時とばかり、財界は、労働時間の規制緩和、36協定の上限緩和、有期雇用の上限期間規制緩和、派遣法26業務の弾力運用、派遣や請負の規制緩和等々を要求し、政府は、その意向にすり寄ろうとさえしています。

まさにいま、被災地はもちろん、全国の労働者と住民のいのちと健康・生活を脅かすこれまでの道の「復興」を拒否し、人間を第一に考える社会への転換をすすめる道を造るための対決、勝負の時といえます。ILOが提唱した21世紀の最重要課題=「ディーセントワーク」にむけて労働政策を転換する「たたかい」をしなければなりません。

新しい年にあたり、「すべての働く人にディーセントワークの獲得を。政策・制度要求の実現。全都道府県での地方センター確立で、働くもののいのちと健康を守る事業の新たな地平を切り拓こう(第14回総会)」との旗を、一層高く掲げ、活動を進める決意を新たにしています



泉南アスベスト最高裁勝利首都圏(全国)スタート集会

働くもののいのちと健康を守る全国センターなど8団体で共催する「大阪泉南アスベスト国賠訴訟 最高裁での勝利をめざす首都圏(全国)スタート集会」が12月3日、TKP渋谷カンファレンスセンターで開催され、110人が参加しました(写真下)。

共催団体を代表して「いの健」全国センター・田村昭彦副理事長は、最高裁にむけてのたたかいは、「健康で働き生きる、健康権を守るたたかいであり、正義のたたかいである。全国と首都圏の力を結集して原告勝訴をたたかいとっていく意思統一の場としたい」とあいさつ。

人のいのちや健康に寄り添った判決を根底からくつがえすもの

「筑豊じん肺訴訟最高裁判決の目線で泉南国賠訴訟大阪判決を斬る」と題して講演した全国じん肺弁護団連絡会議幹事長の山下登司夫弁護士は、泉南高裁判決がいかに不当なものであるかを解明しました。

山下弁護士は、大阪高裁判決の思想が象徴的にあらわれているものとして、労働者のいのちや健康に「弊害が懸念されるからといって、工業製品の製造、加工等を直ちに禁止したり、あるいは、厳格な許可制の下でなければ操業を認めないというのでは、工業技術の発達及び産業社会の発展を著しく阻害するだけでなく、労働者の職場自体を奪うことにもなりかねない」と述べているところにあると判決内容を解説。職場が守られたとしてもいのちや健康が守らなければどうなるのか、いのちや健康と石綿製品の社会的必要性、公用的有用性を天びんにかけて石綿曝露による人への障害が、生じてもむやみに規制すべきでない、これが大阪高裁の考え方だと指摘しました。山下弁護士は、筑豊じん肺訴訟最高裁判決や水俣裁判にふれながら「人のいのちや健康に寄り添った判決」、現在の司法が確定したこの考え方を根底からくつがえすものだと述べ、この判決を聞いて大きな怒りとともになんとしてもくつがえさないといけないとの決意を表明しました。

公害企業は厳格な調査研究義務、結果回避義務を負う

「歴史の流れに逆行する泉南アスベスト高裁判決を斬る」と題して、全国公害弁護団連絡会議代表委員の篠原義仁弁護士は、公害企業は厳格な調査研究義務(予見義務)及び結果回避義務を負っているとして、「大気の浄化能力にも限界がある以上、大気汚染による健康被害発生の危険が生じたならば、大量の大気汚染物質を大気中に排出する事業の事業者は、被害を生じない程度にまで排出量を減少させ健康被害の発生を防止する適切な措置をとる義務がある」とした西淀川判決を紹介。

篠原弁護士は、四大公害裁判の判決・公害健康被害補償法の成立経緯から見ても、高裁判決がいかに歴史に逆行しているかを解明し、従前のたたかいの経験に学び、係争中の国賠訴訟と共闘することの重要性を訴えました。

400頁に及ぶ理由書、1008人の代理人

泉南アスベスト国賠弁護団からは、主任の村松昭夫弁護士が、大阪高裁が関連証拠をまったく無視、事実を意図的に歪曲するといった恣意的な事実認定をおこなったことなど不当性を明らかにしたうえで、最高裁に400頁に及ぶ理由書を提出し、1008人に及ぶ代理人(弁護士)を立てることができたことなどを報告。今後のたたかいについて、第2陣が地裁で勝利すること(判決は2012年3月28日)が、最高裁の逆転勝訴への大きな一歩となる、そのためにも、不当判決を跳ね返す広範な世論の結集を呼びかけました。

原告団代表4人が上京(写真上)。原告の訴え、メッセージ紹介のあと、支援団体のリレートークで13人の方からの発言がありました。

泉南アスベスト訴訟を勝たせる会から、第2陣の地裁あて署名の取り組み、機関紙・ブログ等での紹介、マスコミへの投稿など世論を広げること、最高裁宣伝行動、「泉南応援団」への協力などが呼びかけられました。



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