アスベスト大学習会2012

活動ニュース 活動報告

様々な角度から学ぶアスベスト尽くしの3日間

1日目 アスベスト教材のお披露目

1日目 若手医師による胸膜プラーク読影

1日目 若手医師による胸膜プラーク読影

1日目は民医連九州沖縄ブロックの医師を対象とした企画で、16名の医師が参加した。医師以外の参加もあり総勢30名参加となった。

全日本民医連が2年かけて行ったアスベストに関する多施設調査(「原発性肺がんと診断された患者の中に、アスベストの影響を受けている人がどの程度いるのか」を調べたもの)まとめ、事例を基に作成された質量ともにすぐれた教材が完成した。教材のお披露目を兼ねた講演は、教材製作にかかわった山下義仁先生(鹿児島民医連・国分生協病院)が行った。「民医連の全ての医師がプラークを読影することが出来るように・・」との思いから講演タイトルは「民医連医師のためのアスベストのすべて」と題して行われた。教材は、アスベストの問題を社会的な問題としてどう捉えていくのか、ということにも触れていて、アスベスト問題を多面的に捉えることが出来る内容となっていた。

講演のなかでは、実際に胸膜プラークがどこにあるのか、若手の医師が画像から探してみるといった、実践的な研修の場ともなっていた。

2日目  健康被害、救済について

2日目 会場いっぱいの78名が参加

2日目(3月25日)の企画は、九州セミナーとの合同企画として開催、78名が参加した。アスベスト曝露による健康被害問題について3名の先生方を招聘し、アスベストの健康被害に関する集中した講座となった。

「クボタアスベスト問題から見たアスベスト被害の実態~臨床医に望むもの」と題した奈良県立医科大学の車谷教授の講演は、先生ご自身が調査されたクボタ旧神崎工場周辺住民への疫学調査の結果を示しての話では、風向きによって健康リスクが違うこと。また、アスベストの健康被害について諸外国で歴史的な実態と疫学調査がなされていることなど初めて知ることばかりだった。

次に、東京民医連・芝病院の藤井先生は、建設労働者のアスベスト健康被害の実態について経年的な調査をされた結果から建設業ではさまざまな職種でアスベスト曝露による健康被害が出ていることが報告された。

2日目最後は「諸外国のアスベスト補償制度」について立命館大学の森教授による講演があった。
一番進んでいるのはフランスで「救済」という考え方ではなく「補償」をいう観点で制度が出来ていること。今後、アスベスト新法の補償内容を改定させていくための指針となるものを学ぶことが出来た。

3日目 裁判や運動について

3日目(3月26日)は裁判や運動の側面について、学ぶ企画があり、49名が参加した。

最初の講演は「筑豊じん肺最高裁判決の今日的意義~とりわけ国の責任について」と題して、筑豊じん肺訴訟弁護団事務局長の小宮学弁護士は、泉南アスベスト訴訟第1陣の大阪高裁判決との違いを示し話され、以下の点を指摘された。

泉南アスベスト大阪高裁判決は、①権限を定めた法令の趣旨・目的やその権限の性質を軽視したもの ②被害の実態を軽視したもの ③労働者の健康保護という労働関連法の趣旨・目的に反するもの ④司法による行政のチェック機能の軽視したもの。

二つ目の講義は「トンネルじん肺根絶への闘い」と題して、建交労労災職業病部長の緒方徹治さんがトンネルじん肺患者さんの掘り起こし運動から、労災認定闘争、裁判闘争へと運動を広げて行った様子がよくわかる講演であった。裁判を闘うなかでトンネルじん肺根絶について国との合意書に調印するなど現場の労働環境改善をすすめるなど大きな成果を出している。裁判によらない解決をとトンネルじん肺基金創設をめざして、現在も運動は続いている。トンネルじん肺訴訟から闘いと運動のあり方を学んだ。

最後は2011年10月5日建設現場で働いて、アスベストによる健康被害を受けた19名(労災認定者)が原告となり、国と建材メーカー42社を被告とした損害賠償請求を福岡地方裁判所に行った「九州建設アスベスト訴訟の意義」と題して、弁護団事務局長の福留弁護士は講演の冒頭、アスベストの裁判は歴史的な岐路にある裁判であると話され、建設労働者の裁判は全国で6番目であると紹介された。建設労働者の被害の深刻さなど、わかりやすく話をされた。

 

アスベスト大学学習会2012参加者の声

橋口先生(親仁会・米の山病院院長)
車谷先生の講演に感動しました。呼吸器内科医として30年間、じん肺やアスベスト関連疾患に関わってきていますが、発がん性について国際的レビューを聞いて、今後に活かしていきたいと思います。

秋山先生(佐賀県医療生協・神野診療所)
すごく勉強になりました。アスベスト関連の病気のことも初めて知ることが出来ました。
社会的な背景まで深めることが出来ました。自分自身が甘かったなぁ・・と思っています。患者さんの掘り起こしをきちんとしなければいけないと思いました。頑張ります。

宮崎先生(長崎県民医連・健友会理事長)
今まではアスベストに興味はありましたが、関わってはいませんでした。五島の診療所に行くようになり、そこではじん肺やアスベスト関連の患者さんが受診されているので勉強をしなければ・・・という思いで参加しました。
非常に勉強になりました。今後も勉強をしながらやって行きたいと思っています。

山下先生(鹿児島県民医連・国分生協病院)
アスベスト関連の疾病そのものもそうですが、補償の問題、歴史的な事など知らないことばかりでした
が、今回の学習会に参加して頭がスッキリと整理出来て解決することが出来ました。
今後は県連や地協のなかで、自分が学んだことを伝えて行きたいと思います。

 

 

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