ありふれた上肢の障害も職業病 上肢障害の事例

調査・研究

写真1、手指に瓦をかけて運搬する作業

写真1、手指に瓦をかけて運搬する作業

仕事による使い過ぎで生じた上肢の病気は上肢障害として労災認定されるようになっている。しかし、ありふれた病気にもかかわらず「私病」として見過ごされることが多い。最近、労働組合から労災認定の相談を受ける事例が増えており、疾病を生活と労働の場でとらえなおす意味で上肢障害の事例を紹介する。

 

 

 

事例:瓦工(腱鞘炎、男性、61才)

2007年頃から、左2.3.4指と右1.4指の違和感を自覚。2008年末頃から、左手の指が曲がりにくく弾発現象が出現し、近医整形外科を受診し腱鞘炎と診断。労災申請の相談のため2009年9月に千鳥橋病院を受診。後日、労災申請の援助を行い労災認定となった事例である。

瓦の運搬と瓦切りによる過度の負担

写真2、瓦切りの作業

写真2、瓦切りの作業

事例は34年間、瓦工として従事していたが、特に、手指の負担が強いのは、瓦の運搬作業と瓦切りの作業であった。瓦の運搬(写真1)は、瓦4枚を結束した束を(約13kg)両手で把持して持ち運ぶものである。瓦を把持する指に極めて強い負荷のかかる作業を繰り返し、1日で2,000枚から2,500枚の瓦を運搬するものであった。瓦切りの作業(写真2)は、瓦の切り機を用いるが、右手で切り機のレバーを強く把持して使用し、左手で瓦を把持して固定する。左手は、瓦が歪まないように固定するため強く把持することが必要で、その負荷も相当に強いと考えられた。
腱鞘炎の原因は、教科書的にも「原因は必ずしも明らかではないが、手指の過度の使用による慢性非特異的炎症によると考えられている。また、妊娠、出産を機会に発症することや、更年期の女性に後発することからホルモンの関与も推察されている(図説臨床整形外科講座)」と、仕事による過度の使用が原因と考えられている。労災認定の基準でも、上肢の過度の負担に発生した運動器疾患の一つとして明示された疾患となっている。

上肢障害の労災認定条件

表1、建設労働者で労災認定された 上肢障害の事例

表1、建設労働者で労災認定された
上肢障害の事例

この事例の他にも、多くの上肢障害の事例が当院で労災認定となっている(表1)。先述の上肢障害の労災認定条件では、「①上肢の反復動作②上肢を上げた状態で行う動作③上肢の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業」が上肢に過度に負担が加わる作業と定義されている。こうした作業は建設労働を中心に少なくない。上肢障害を訴える事例に関しては、職歴を聴取し、上肢に過度に負担が加わる作業の従事歴があれば労災認定の支援を積極的に行うことが必要である。

九州社会医学研究所 
副理事長 舟越 光彦

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