ストレス症状を有する者への面接指導制度の問題点

調査・研究

健康診断でのメンタルヘルスチェックには問題が指摘

1、はじめに

2010年12月に、労働政策審議会から、職場におけるメンタルヘルス対策の「新たな枠組み」として、ストレス症状を有する者への面接指導制度に関する提案が厚生労働大臣に建議された。提案が建議された背景は、自殺者が1998年以降12年連続して3万人を超えているが、このうち「勤務問題」が原因・動機の一つとなっている者は約2,500人に達すること。仕事や職業生活に関して強いストレス等を感じている労働者は約6割おり、精神障害等の労災認定件数が増加傾向にあるにも関わらず、心の健康対策(メンタルヘルス対策)に取り組んでいる事業所の割合は約34%(平成19年)にしか過ぎない現状から、職場でのメンタルヘルス対策の推進を目的提案された。

しかし、本制度は、専門家や関係者から有効性や個人情報の保護などに関して多くの問題が指摘されている。

2、面接制度の概要

面接制度は、健康診断の際に、医師が労働者のストレスに関連する症状・不調を確認し、この結果を受けた労働者が事業者に対し医師による面接の申出を行った場合には、事業者が医師による面接指導及び医師からの意見聴取等を行うというものである(図1)。仕組みとしては、現行の長時間労働者に対する医師による面接指導制度と同様のものである。

3、問題点:有効性について

ストレス症状を有する者への面接指導制度

面接制度の問題として指摘されるは、①健診の際の問診のスクリーニングの有効性、②個人情報の保護の問題、③外部専門機関の問題である。

スクリーニングは健診の際の問診に組み込むことが想定されているが、限られた質問項目で、メンタルヘルスの課題を持つ労働者を的確に拾い上げることは困難と考えられる。メンタルヘルスに関わるセンシティブな事項を健診の問診で正確に回答することは期待しにくく、しかも、短い時間で実施される健診時の診察でメンタルヘルスの問題を抱える労働者を医師が拾い上げることも困難と考えられる。

ストレス症状を有することを医師から指摘された労働者は事業者に産業医等による面接を申し出ることになるが、事業者による不利益な扱いを恐れ、面談を希望しない労働者が多くなることは容易に想像できる。一方で、事業者はメンタルヘルスを抱える労働者をより広く把握することが可能になるだろうが、その結果、個人の健康情報の不当な利用も危惧される。

さらに、メンタルヘルスのスクリーニングをすると正常者を含む多数の労働者が医師による面談が必要と判断されることになる。しかし、現場ではメンタルヘルス問題に経験のある産業医は圧倒的に不足している。そこで、新たな枠組みで外部専門機関に産業医と同等の資格与えることが提案された。この点に関しても、職場のメンタルヘルス問題は職場の労働実態を熟知した専門家が職場環境の改善も含めて個別のメンタルヘルス問題の解決にあたることが有効と考えられており、安易な外部機関の活用ではメンタルヘルス対策の実効性は期待できないと考えられる。

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